「誰も言わなかった薪ストーブの話」「誰も言わなかった薪ストーブの話・パート2」は、横浜の薪ストーブ専門店「ブロス」オーナーである鷲巣勤が2008年から2011年にかけて執筆したコラムです。サイト上に発表して以来、多くの皆さまにお読みいただき、たくさんの反響をいただいて参りました。
その人気コラムを、このたびアマゾンキンドルで電子書籍化いたしました!
電子書籍化にあたり、今までのコラムに訂正、加筆をしたほか、新たに「ある薪ストーブ屋の日常」「誰にも言わなかった私の話」「誰も言わなかった薪ストーブの話・パート3」の3章も加筆し、2巻に分冊いたしました。
この本には、現在、薪ストーブの購入を検討している方、「いつかは薪ストーブ!」と憧れの気持ちを抱いている方々に、ぜひ知っておいていただきたい情報が満載されています。薪ストーブを扱って30年以上の経験を持つ筆者が、薪ストーブの素晴らしい魅力だけでなく、購入後の注意点やデメリットまでを、さまざまな視点からまとめ上げ、読みやすく解説しています。
既に薪ストーブをお使いのユーザーはもちろん、薪ストーブを販売する人や、その設置施工などに携わる建築士、工務店の方等にも有益な情報ばかりです。さらに、アウトドア愛好家や、これからビジネスを起業しようと志す若い方々、筆者と同じ時代を生きてきた昭和世代の人たちなど、さまざまなバックボーンをお持ちの方々にとっても、1冊の読み物として楽しめる本を目指しました。
興味を持っていただいた方のために、前書きの一部と、「誰も言わなかった薪ストーブの話」の1話分を、ここに公開いたします。「続きを読みたい!」と思われた方は、ぜひ、アマゾンにて電子書籍版をご購入ください!
「誰も言わなかった薪ストーブの話」は、2008年に私が書いたコラムです。当時、建築業界では薪ストーブ人気が高まり、今までになかったほどの「薪ストーブ熱」が業界を包んでいました。 その状況は私や私の仕事にとって、好ましいと思われるかもしれませんが、実は個人的には気がかりなことも増えていました。あまりにもイメージが先走りし、多くの情報が氾濫していたので、買い主が混乱していたのです。
どんな商売でも同じだと思いますが、売れる、好機だ、今がチャンスだ、という市場には、新規参入者が数多く集まります。<中略> すると良い商品、良いサービスに入り混じって、粗悪な商品、粗悪なサービスも見受けられるようになってしまいました。情報も過多となり、正しい情報がほとんどでしたが、中には眉をひそめるような記事を見つけてしまうこともありました。<中略>
私は知らんふりはできませんでした。薪ストーブを長年に渡って販売してきた業者として、また薪ストーブを愛する一個人として、薪ストーブにまつわる本当の話をしなければいけない、ユーザーの皆さんに正しい情報を伝えなければいけない、と強く思ったのです。
そこで、「誰も言わなかった薪ストーブの話」を書き、ブロスのホームページ上で公表しました。薪ストーブの魅力はもちろんたくさんあるのですが、同時にマイナス面も包み隠さず書くことで、薪ストーブを買おうという人の目に留まり、判断材料にしていただければいいな、という思いでした。
……<後略>
『薪ストーブは自然環境に優しい暖房器具。燃料となる薪は、再生可能だし、時には知り合いの造園業者から無料でもらうこともできる。遠赤外線の輻射熱はとても暖かく、家全体を暖めることができるし、体も芯から暖まる。ゆらめく炎は精神的なくつろぎを与えてくれ、家族が笑顔で薪ストーブの周囲に集う。ストーブトップでは今日の夕食がコトコトと音を立てて煮えている……』
よくある薪ストーブのイメージです。どれも正しくその通りだと思います。
ゆらめく炎は、何故か人を落ち着かせてくれます。薪のはぜる音、木の香り…そんな薪ストーブのある生活は、ひと昔前まで、誰もが夢見るものでした。それがここ数年、単なる『夢』ではなく、非常に身近で現実的なものとなってきました。 薪ストーブが見直される原因はいろいろあると思いますが、地球温暖化に対する人々の危機感と、それに伴う自然志向の高まりが大きく影響しているように思います。また、このところの原油高騰も一因かもしれません。
人気が高まるのは薪ストーブファンとしては歓迎すべき状況です。しかし、イメージだけが先行していないでしょうか? 私が冒頭に書いた文章には、実際の使用にあたっての情報が、全く欠如しているのです。気付きましたか? 売り手側は当然販売することが目的なので、精神的なくつろぎや暖かさばかりを強調し、薪ストーブのマイナス要因には口を閉ざしがちです。中にはメーカーの者でも、薪ストーブを使っていないことすらあります。
薪ストーブについては、インターネットや雑誌で調べることもできます。しかし注意しなければいけないのは、ウエブ上での論客も、自分の使っているストーブの特徴しか知らないということ。「一年間で使う薪の量はこのくらいです。煙突そうじは五年もやっていません」──と書いてあっても、それはその家の、その薪ストーブの場合だけ。あくまでも参考例の一つなのです。
では、情報が氾濫する中、自分で使ったこともない薪ストーブを、どうやったらあなたは正しく選べるのでしょうか? それには、あなたの暮らしそのものを検証してみること。そしてあなたの暮らしに合った薪ストーブを選ぶ手伝いをし、アドバイスしてくれる販売業者と出会うことがとても大切なのです。
今、薪ストーブを導入するほとんどの人は、ホテルやペンション、友人宅などで見た事があるだけです。そして雑誌広告やカタログの写真のイメージだけで購入してしまう場合もあります。しかしイメージ先行の買い物には、必ず後悔がつきまといます。まずは、薪ストーブについての基本的な情報を、しっかり知っておきましょう。
……<後略>